緑豊かな敷地に建つ1600世帯からなるビックコミュニティーの1住戸の全面改修です。棟と棟の間には木々や公園や池が点在し、安心してこどもたちが遊べる環境の中で子育てをしたいと私自身も育ってきたこの地に家族で戻ってきました。築年数は経過していますが、良好な管理状況と修繕計画がしっかりとなされていたのも購入の決め手となりました。実家とは別棟の近居になります。「木と土と石」最小限の国産自然素材で主に構成された家族3人のためのちいさなすまいです。ちいさなすまいを選択したことで職人さんの手仕事により空間の質を上げることにつながりました。築40年以上の物件のため、専有部分の配管・ガス管は全て更新。また水回り以外建具を設けず、家全体をワンルームにしたことで温熱環境を整えることにもつながりました。外壁に面する内壁に断熱材・樹脂製のインナーサッシを採用したことで冷暖房1台で夏も冬も家中温度差を感じることなく快適に過ごせています。冬場のサッシや玄関ドアの結露も転居してきてから一度も生じていないのもうれしい検証結果です。その日、その時にいちばん心地よい場所に移動する遊牧民のようにあちこちに居場所をつくるように心がけました。陽射しが差し込む午後の窓辺はいつでも特等席です。
Deta
所在地:神奈川県相模原市
家族構成:夫婦、子供1人
専有面積:52m2
建物竣工年:昭和54年
改修方法:スケルトン/断熱改修・二重サッシ:施工
専有部既存給排水管:更新/遮音等級:LL40(2重床施工)
構造:RC壁式構造
工程:設計期間 2018年9月〜2018年12月
:工事期間 2019年1月〜2019年3月
設計:サワダユリ建築設計 担当サワダユリ
施工 :井の頭リフォーム 担当青木知人
大工:ヒトトキ 小塚祐介
建具:山田建具店
左官:山本プラスター
写真:畑拓
総工費:約790万(自主施工費、設計・監理料別途)
玄関扉を開けると大谷石敷の土間空間が広がります。土間ギャラリーと名づけた空間はアトリエと生活の場の「間」であり、客人を迎え入れる「間」であり日常でアートや草花をたのしむ「間」となっています。ちいさな家にあえて余白の空間を設け暮らしを楽しんでいます
書斎として家族みんなで共有しているスペースです。生活空間とは土間を挟んで距離があり離れのようなイメージ。2人並んで作業も可能な長いカウンターデスクは、杉材厚40㎜の無垢一枚板を大工さんが造作したもの。造作本棚はA3サイズに合わせて設計。収納力抜群でまだまだ空きがある。外の風景を額縁のようにきりとりたい、光を柔らかく取り込みたいとの想いからすべての窓には断熱効果もある障子をしつらえました。
節が愛らしいアクセントに。やわらかい素材なので書き物の際は下敷きを敷いています。木の質感が大好きなので気づいたら手で撫でていること、多いです(笑)
建具は全て設計者がデザインし、建具屋さんが製作しました
壁構造の壁の厚みが安心感と奥行を与え、塗り壁の良さも強調してくれているように感じます。
にじり口のようにまたいで入る形状のアトリエ入口。2重床分の段差を逆手に取り、腰掛けるベンチのようにも使っています。左手の引戸の奥にはクロゼットと可動棚を設計。フリースペースのクロゼットと併せて家族3人分の洋服類が余裕で納まります。可動棚にはタオル類や下着等洗面所で使用するものを収納し、動線上スムーズになるように計画しました。何か購入したら一つ手放す方法でこれ以上ものを増やさないように努めています。
床材は杉材厚30㎜で土間以外の全ての部屋に採用。マンションの管理規約の遮音等級が一番厳しい等級であった為、コスト増の2重床施工にしてまでどうしても採用したかった無垢杉床材。風合いもさることながら柔らかな足触りや床暖房は採用していないけれど冬場にヒヤリという冷たさは感じない良さがあります。年々飴色に育つ経年変化も楽しみの一つです。反面、冬場は木が収縮して隙いて埃が入ったり物を落とせば傷が付きます。でもそれを簡単に飛び越えてしまうほど愛おしくて大好きな素材です。幅広で厚みも十分あるタイプを採用したことでより杉無垢材の良さを肌で感じています。娘は冬でも自宅では素足です。娘のお友達も我が家に来るとみんな靴下を脱ぎ捨てます。こどもは本能的に気持ちよさを感じとる天才ですから。土間には大谷石を敷きました。調湿効果や経年変化も楽しめる柔らかい素材です。切り出したてのグリーン色から育ててみたくて栃木の石材屋さんから直接仕入れました。壁・天井は全て日本珪藻土左官仕上。調湿作用に優れていて、光があたった時の質感や手触りにおいて手仕事の暖かさを感じることのできる素材です。
アトリエの壁の珪藻土左官仕上と全ての木部カウンター・無垢杉床のワックス塗装はDIYにて自分達で施工しました(DIY編ご参照下さい)
窓から見える風景をとても大切にしています。アトリエからは毎年寒桜を愛でることができ、土間からはリビングの先に広がる緑や紅葉の赤や黄色、山々の風景まで視線が抜け開放感が得られます。こちらに越してきてからは、観葉植物は季節の切花・枝物以外は置かなくなりました。その代わりに外の景色を我が家のグリーンの一部として楽しんでいます。ワンルーム空間のため季節のいい時期にはリビングの南西の窓とアトリエの東の窓から心地よい風がいえの中を通り抜けていきます。
木カウンターと洗面ボールで造作しました。洗面所とトイレのみに設けた建具は引戸を採用。人の動線を遮ることなく開閉もスムーズです。引手部分は全て金物ではなく手触りの優しい手掛け加工で設計しました。建具屋さんが製作。
造作キッチン。設計者が設計したものを大工さんと現場監督さんが造作しました。手持ちの鍋や調理器具等が上手く納まる寸法、使いやすい収納方法の考察には時間をかけました。キッチンカウンターの高さ・奥行もオーダーメイドなので自分で使いやすいサイズに設計。毎日家族のために料理を作る人が使いやすい・楽しくなる。そんなキッチンを目指しました。キッチン壁正面・横はモルタル左官仕上撥水塗装
食事も読書も仕事も娘の勉強もいちばん滞在時間が長い場所です。
奥行があり上階のバルコニーが庇がわりで雨がかりにならずアウトドアリビングとして日々活躍しているバルコニー。完成してから3年目に自分達でウッドデッキを作成しました。
(DIY編ご参照下さい)
キッチンは独立タイプです。構造上で壁が抜けず、憧れの対面キッチンは叶いませんでしたが、雑多感が見えないのでこちらでよかったかなぁとも今は思います。会話を楽しみたい時は友人やこどもをキッチンに呼びます(笑)
ちいさなすまいは部屋の機能を固定することはしないでおおらかに変化していきます。昼間はヨガの場であったり、こどもとお友達の遊び場であったり。夜になればお布団を敷き寝室となります。日によって時間によってどんな風にも過ごせる場所があるのは実際の何倍もの自由と広がりが感じられました。引違いの建具の奥は押入とクローゼットになります。収納力も抜群です。
いつも親子でこんな感じでゴロゴロしています(笑)
リビング・ダイニングに造作した長い収納カウンターはDVDや写真、季節のインテリア小物、こどものおもちゃ・作品、ルーター類等雑多で見せたくないものをラフに納められるので重宝しています。床に座ればカウンターデスクになり、腰掛ければベンチにもなる高さで設計しました。
こうして工夫しながら暮らしてみるとすまいというのは広さだけでは測れないものだなぁと思いました。簡素だけれど本質的でこころゆたかなくらし。こどもの原風景となることを願って設計しました。これから永いときを経て家族とともにいえが育ってゆくのも楽しみです。写真は夕方家路に着く時、家族を灯す灯台をイメージし「おかえり!」の意味も込めて照明を付けているシーンです。障子からもれるあかりがまるで行燈のように暖かく外出時は私も眺めながら家路につきます。娘もうれしいようです。
全てプロの方にお願いできればベストなのでしょうが、コストとの兼ね合いもあり、子供部屋兼アトリエを自分達で珪藻土塗り作業を楽しみました。かなり体力も気力も必要なのでコスト削減のためだけにはオススメできませんが、自分たちの大切な家。手間をかけることで愛着ひとしお。家づくりの思い出にも残ります。娘も「楽しい!」を連発。子供にとっては泥遊びの延長なのかもしれないですね。
今回木部のワックス塗装は全て自主施工でした。床材・カウンター材ともにドイツの「オスモカラー」(赤ちゃんが舐めても安心な材料)で塗装していきました。塗装は数日に分けて自分一人で施工したためかなり大変でしたが、左官仕上とともにコストで諦めるのではなく自ら手間をかけて楽しみながら減額調整する方法もあります。リノベされる際は是非試してみてください。ちなみに木部は生地(そのまま)でも大丈夫ですが塗装したほうが多少の水じみ等は防げますし、経年変化でより艶もでて飴色になっていきます。そして何より濡れ色になり木目が浮き出てきてよい感じになるのです。
内見した時から奥行のあるバルコニーをアウトドアリビングとして取り込むことを考えていました。転居して2年目の春、世の中はコロナ禍の中緊急事態宣言が初めて発令され、娘も小学校が休校になり、3ヶ月母子で基本自宅でおこもり生活を余儀なくされました。その際は手持ちの簡易テントを張ったり、ハンモックを置いて楽しんでいましたが、そんな生活も1年続けていて旅にもなかなか出られない中、3年目のGWに現場監督である夫にもお願いして家族みんなで念願のウッドデッキを製作しました。室内のフローリングの残った材と足りない分のみ同材を調達しました。本実加工されていますし台風以外は雨がかりにならないので隙間なく施工しています。塗装も同じ理由からキシラデコールはやりすぎだろうと判断し、室内にDIYで塗装したオスモワックスを自分で塗りました。真冬、真夏、花粉のつらい時期以外は仕事はもちろんランチやヨガ、本を読む、ぼーっと遠くの緑と山々の風景を眺める、昼寝etcと日々アウトドアリビングとして活用しています。空いた場所では趣味の家庭菜園を楽しんでいます。またお天気がよければ毎日山に沈みゆく夕陽が眺められる環境にも幸せを感じています。
窓を開ければリビングとウッドデッキがつながり、空間以上の広がりが感じられます。同じ材だとよりつながりが感じられるようです。我が家では屋外とはいえウッドデッキはもはや部屋の一部です。
内部木部と同様にデッキ部分にはオスモワックスを自主施工しました。
我が家の表札はオリジナルです!杉無垢床材の残りをカットしたものを土台にして、アイアン文字は鍛治職人さんにわたしがデザインしたもので制作していただきました。取付は配偶者(現場監督)にお願いしました。内部の自然素材で構成された空間と違和感のない私達らしい表札になりました。
市川の集合住宅の一室の改修計画。既存サッシがまたぐ形状で設計されていたのを逆手に取りバルコニーへのステップ台として、またお子さんのおもちゃなど自分でお片付けできる収納が欲しいとのご要望で、TV台を兼ねたカウンター収納を計画。カウンター下部の収納はキャスター付で引出して小さなお子さんでも片付けしやすいよう配慮した。コロコロもきっと楽しいおもちゃにもなることでしょう。L型カウンターの逆方向のカウンター下部はオープンにしてお子さんが足を投げ出してお絵描きや絵本を読んだりが可能なカウンターデスクとしてご提案。
木の質感がお好きとのご要望でキッチン壁一部には板張りをご提案。収納を多くとのご要望だったため、既存が押入だった箇所を一部クロゼット仕様に設計。フラットな畳の部屋は新たに小上がり畳を造作し、下部は全て収納にするご提案も。
イメージパースの他、平面図・展開図(複数枚)・仕上表を作成し、3ヶ月かけてお打合せしました。家具選定や照明器具のご提案もご希望でしたので行いました。現場には現地調査、着工前、着工してから数回、お引渡しに立ち会いました。(クライアントのコストの関係で残念ながら直前でインナーサッシや住設取替縮小工事になりました)
施工/株式会社佐久間工務店 佐久間 侑史
ご夫妻と小さなお子様2人の4人家族の為の住宅の基本設計です。
典型的な3方向住宅に囲まれた都市型の敷地の為、光と風を求めて2階リビングPLANをご提案しました。(比較検討のため1階リビングPLANも作成してプレゼンしました。)
建物をL型に配置することで隣家からの視線を遮りながら南面の光と外部の自然を取り込むような計画となっています。
クライアントのお父様からのご依頼(建設会社の代表)であった為、基本プラン以降は引き継ぎました。